レプリカ・ガーデン 水葬王と銀朱の乙女 / 栗原ちひろ

本の感想, お気に入り, 作者名 か行栗原ちひろ

人間に恋をすると人間になることのできる「魂持ち」の人形。歯車都市の人形師ヘイディの工房で作られた「魂持ち」の少年人形イファは人間になることを夢見て、ヘイディやヘイディの助手アーセルと楽しく暮らしていた。しかし、その生活もイファが何者かに狙われることにより終わりを告げる。水葬都市に連れてこられたイファは、人形を憎むという水葬都の元首フォルナートに出会い、恋をした。


オペラシリーズの栗原さんのB’s-LOGでの新作は、ヴェネチアっぽい退廃的な雰囲気を醸し出す都市での人間になりたい人形と、人形を憎む青年のラブストーリー。なんてキュンキュンもののラブストーリーなんだこれはちょっとすごくいいですね!と思いました。ゴロゴロコースじゃないんだけどなぁ、うまくいえないけど何かいい。

少年型の人形が少女になる?もしかしたらとても苦手な設定かも……と思ってたんですが何のことはなく、このあたりのネタもとてもおいしく仕上がってました。ここでちょと二の足を踏んでいるのならためらう必要はあまりないかと思われます。
イファの人形ゆえの無邪気さとストレートさと素直な愛情表現がとてもよくて、最悪な出会いをしたはずなのに放っておけなくてフォルナートに恋する様子の描写がとてもよいです。これでご飯三杯は堅い。フォルナートはフォルナートで、全ての不幸の元凶であるイファ(の前代の人形)に復讐するためにイファを自分に恋させて殺してやろうとするのだけど、イファのまっすぐな気持ちを受けて……というところらへんがとてもすばらしい。これだけで(以下略)。
あとはごてごてした都市とかドレスの描写がこれまたよくて。過剰すぎず、かといって足りないこともなく物語の雰囲気を盛り上げていましたねぇ。重すぎず暗すぎず、かといって軽いこともないのでちょうどいいあんばいです。ストーリーといい物語の醸し出す空気といい、とても好みでした。

レプリカ・ガーデン 水葬王と銀朱の乙女
栗原ちひろ/明咲トウル
B’s-LOG文庫(2008.12)
ISBN:978-4-7577-4539-1
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